地区コミュニティ協議会制度
薩摩川内市の地域コミュニティ(地区コミュニティ協議会)
はじめに
近年,市民と行政との共生・協働ということばが強く叫ばれています。「共生・協働」とは,自治会やNPO法人・ボランティア団体・企業等の多様な団体と行政が相互の理解と信頼のもと,目的を共有し,連携,協力して地域の公共的な問題の解決を目指すことをいっています。
市町村では,古くから自治会や町内会など地域の自治団体が組織されていますが,行政は,市民生活において,これらのコミュニティ団体と共生・協働の関係にあります。
薩摩川内市は,平成16年10月に1市4町4村が合併して誕生しましたが,合併に際して川薩地区法定合併協議会が設立され,この協議会で合併後の市政運営についてさまざまな協議がされました。そして,この協議において,合併して広域になる新市においても,地域コミュニティにおける,市と市民の共生・協働活動の推進は重要な施策であることが確認されました。
合併前の地域コミュニティについては,公民会,公民館,町民会,区などの名称で呼ばれ,組織の規模,形態もさまざまでした。新市では,地域に組織される,これらの最も小さな自治団体を「自治会」と呼ぶことにしましたが,新たに,この自治会を含む地域の各種公益団体を統合して,概ね小学校区を一地区として地区コミュニティ協議会を組織していただく決定をして,全市に48の自治活動団体としての地区コミュニティ協議会を組織していただきました。
新市において大きな地域自治団体として組織された地区コミュニティ協議会は,自らの振興活動や行政との協働の主役として活動しています。
また,合併前に全自治体に組織されていた,自治会は,この地区コミュニティ協議会の中核的自治団体として,地区のコミュニティ協議会に所属し,木目細かなコミュニティ活動を担っています。
この資料は,新市薩摩川内市における地域コミュニティの母体である,地区コミュニティ協議会の活動の現状と設置までの経緯について記すこととします。
1 地区コミュニティ協議会制度とは
本市における地区コミュニティ協議会制度とは,市民が主体となった地域づくりを促進するために従来の地区*における自治会・体育協会・生涯学習振興会・子供会・老人クラブ等の連絡協議会などの機能(運営体制や助成体制など)や事務局体制の強化を図りながら,より充実した横断的な地区コミュニティ*の組織体制の確立・運営のためのしくみのことをいいます。
地区コミュニティ協議会では,地区単位での課題や問題点を話し合いながら,自ら「地区振興計画*」を策定し,その施策・事業を実施していきます。なお,自治会における従来の活動についても地区コミュニティ協議会(以下,「協議会」という。)との連携を図っています。
なお,この地区コミュニティ協議会は,合併前の自治体を範囲とする地域自治区に設置される「地域協議会」(市町村合併特例法)ではなく,市民が設置した任意の自治団体です。
2 組織と運営
(1)活動拠点及び事務所
地区住民の活動の場として,市は48箇所のコミュニティ協議会地区に地区コミュニティセンターを設置しています。各コミュニティ協議会はこのセンターを生涯学習,集会,祭りなどの活動の拠点としています。また,協議会は運営を円滑に進めるために事務局を設置しており,事務所はいずれの地区も地区コミュニティセンター内に置いています。ほとんどの協議会に協議会雇用の職員が配置されており,市では,さらに協議会の事務事業を支援するため,嘱託員(コミュニティ主事)を各地区コミュニティ協議会に1名派遣しています。
(2)組織イメージ図
(3)運営体制
協議会は,概ね次のような組織により構成されています。各組織ごとの機能や役割,定数等については協議会が決めます。
1 規約の制定
実際に協議会を運営するための規約を制定しています。諸活動はこの規約に基づいて行われています。
事業の推進は,総会で承認を受けた年間の事業計画及び予算に基づいて行われます。また,協議会は5年を期間とした地区振興計画を策定しています。
3 主な事務・事業の例
(1) 地区の振興方策の調査研究
(2) 地区振興計画書の策定,実施
(7) 地区コミュニティセンターの指定管理者の場合は管理事務
(1)地区コミュニティ協議会事業計画例
(2) 各地区コミニティ協議会の活動例
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防犯パトロール 地域住民による小学生児童の通学見守りなど (城上地区コミュニティ協議会) |
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柳山アグリランド事業 地区住民によるれあい牧場・公園の整備運営 用地を利用して,さつま芋を栽培し,焼酎の生産など (峰山地区コミュニティ協議会) |
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特産品づくり事業 シソの栽培,シソジュースの生産加工,販売 (大馬越地区コミュニティ協議会) |
4 市の支援
協議会は,地区住民の地縁による自治団体として設立されたものです。協議会の活動は,自治によるものですので,運営および活動資金も会員によるものですが,市は,市民との共生・協働の立場から,事業運営へのアドバイス,運営補助金等の交付や嘱託職員の派遣等,活動の支援を行っています。
(1)事業運営に関するアドバイス
定期的に地区コミュニティ協議会会長会を開催し,行政情報のほか,法律や条例など専門的な知識を情報として提供します。また,協議会の要請に応じ,地区振興計画および事業計画などの策定等に参画し,地区住民が考えるまちづくりをアドバイスします。
(2)運営補助金の交付
組織の規模に応じて運営補助金等を交付しています。
事業規模によっては,協議会の事務職員を雇用することも可能です。
(3)活性化補助金の交付
地区を活性化するため独自の事業に対して,地区の提案により,短期の補助金を交付しています。
(4)マイスター(職人)事業
地区コミュニティ協議会区域内の市の施設等の利便を図るため,地区コミュニティ協議会の技術協力による整備事業に対し,消耗品費,材料費,賃借料等を市が負担します。
コミュニティセンター側溝にグレーチング設置(車両駐車可能に)
(5)地区間交流事業
合併して間がないため,他の地区の事情,事業等を知るために各地区の代表者が他の地区を訪問し交流する事業です。
費用は,市が負担します
訪問先で歴史や事業の研修
(6)職員派遣による支援
協議会が行う生涯学習など各種活動を支援するため,各地区協議会事務局に嘱託職員(コミュニティ主事)を1人配置しています。またインターネット可能なパソコンを設置しています。
(7)その他の補助金の活用
・全ての市民団体を対象として各種事業の補助をするため事業提案の公募を行い,コミュニティ事業として採用されたものもあります。
(提案公募型補助金)
・その他,国・県・財団等のコミュニティ関係補助制度を活用しています。
地区の活動拠点として,各コミュニティ協議会地区内にコミュニティセンターを1ヶ所設置し,集会や生涯学習等の場としています。
5 地区コミュニティセンターの指定管理
協議会の事務所は地区コミニティセンター内に設置しています。したがって,センターや地域の公共施設の管理運営が効率的かつ適正にできることから,市では,一部の施設を除き地区コミュニティセンターの管理を協議会へ指定管理者として管理委託しています。
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調理室を備えていないセンターでは,近隣の公共施設等の調理室を活用している。
第2章 地区コミュニティ協議会設置の経緯等
1 設置の経緯
合併以前,各地域・地区における自治組織は,公民会,公民館,自治会,町民会,区などがあり,互いに上下関係にあったり,規模及び機能等が異なっている状況にありました。
合併協議の中で,地域の声をいかに市政に反映させるかを検討し,各制度との比較を行った上で,本市独特のシステムである地区コミュニティ協議会制度を発案し,住民自治組織の充実及び機能統一を図ることとしました。
2 地区コミュニティ協議会設置に係る分析
「地方分権一括法」の施行に伴い,地域のまちづくりは,従来の全国一律,平等によるまちづくりから地域の個性を活かした自立的,主体的なまちづくりへと移行している。地域の自治は,地域の住民が自分たちで決定し(自己決定),その責任も自分たちが負う(自己責任)というシステムを構築し,地域と行政が協働してまちづくりを進めていく必要がある。
少子・高齢化の進展は顕著であり,地域づくりの担い手である若年層の減少によるコミュニティ活動の衰退が懸念される。市民一人ひとりが,自分の住む地域の福祉や環境,教育などのさまざまな活動に取り組み,相互扶助による地域の活性化に向けた体制づくりを促進する必要がある。
高度情報化や国際化の一層の進展や住民の価値観や生活様式の変化などにより,住民ニーズの多様化・高度化がますます進むものと予想される。市民の地域社会やまちづくりへの参画を促すための広報広聴の充実と情報のネットワーク化の推進により,事務の効率化及び市民サービスの向上を図る必要がある。
国における税財政改革が加速されるなか,全国的な景気の低迷等による市税収入の伸び悩みに加えて,地方交付税や国庫補助金の削減により歳入が減少し,財政状況は一段と厳しさを増している。地域の住民の参画・協力体制による創意工夫による地域活動を地区・校区単位に推進していく必要がある。
3 設置のねらい
(1)住民自治の促進
地区の住民一人ひとりがお互いに助け合って,地区内の諸問題を解決して行く意識を向上させる。
(2)地域リーダーの育成
自分の住む地区の福祉や環境・教育などさまざまな活動や事業に積極的に取り組むため,地区の活性化に向けた体制を構築する。
(3)行政機関等との協働
市及びその他の関係機関・団体との連携を強化し,情報の共有化・効率的な事業の展開を促進する。
4 地区コミュニティ協議会設置促進時の目標
(1) 住みよいまちづくりの推進
地域力を育み,地域課題の解決に主眼を置いて,地域住民が主役となった住みよいまちづくりが推進されます。
(2) 地域の連携
地域組織の中で自治組織や各種団体が一緒になってまちづくりを行っていくことにより,結びつきが非常に強くなります。自治会と各種団体,団体同士などの連携強化が図れます。
(3) 効率的かつ効果的な事業の推進
市が行っている業務の中で,地域で行うことが効率的かつ効果的な事業については委託していきます。もちろんそのために必要な財源の仕組みも整備していきます。
このことにより,これまで行政を通してからしか行えなかった事業などを,地域ですばやく行うことができるようになります。
(4) 自己決定,自己推進
現在,各課が地区・校区ごとに交付している補助金等を将来的に一本化して,協議会に集約します。使い道は,協議会で決めることができるようになります。
(5) 地域の独自事業の推進
協議会では,地域で行いたいことを話し合い,実際にその事業を行うことができるようになります。事業を行うためのお金は,市からの補助金や委託料のほか,国県の地域づくり資金を充てることもできます。