薩摩川内チャレンジストーリー(#47国土交通省 川内川河川事務所・川内出張所)
本市では、令和3年6月8日に、市長が「薩摩川内市未来創生SDGs・カーボンニュートラル宣言」を実施し、2030年SDGsの達成と2050年カーボンニュートラルの達成に向けて取り組んでいます。
また、令和4年5月20日には、国(内閣府)のSDGs未来都市に選定され、今後さらにSDGs及びカーボンニュートラルの達成に向けて、「薩摩川内SDGsチャレンジ」を合言葉に市民総ぐるみで取り組むことを目指し、持続可能な社会の実現のために、一人ひとりができることからSDGsの達成に貢献し、市民のみなさんと一緒に本市の未来を創る各種取り組みを実施しています。
各種取り組みの1つとして、市内でSDGsに関連する取り組みを行っている市民の方をインタビューした「薩摩川内SDGsチャレンジストーリー」を動画及びWebコラムにて公表しています。
【関連ゴール】


守る、ひらく、未来につなぐ。
~川と向き合う人たちの現場から~

本市の中心を流れる、まちのシンボル川内川。ジョギングや犬の散歩を楽しむ人、河川敷でバーベキューをする家族連れ、イベントでにぎわう週末の風景、時にはドクターヘリの発着場にも。近年、川内川の河川敷は、市民の暮らしにより身近な場所へと姿を変えてきた。かつて川は、「近づくと危ない場所」「管理される対象」と捉えられることも多かった。しかし今、川内川では「河川のオープン化」によって利活用が進み、人が集い、親しみを持つ空間として再定義されつつある。川をひらき、人が関わる。その積み重ねが、結果として川への関心や防災意識を高めていく。そんな流れを現場で支えているのが、川内川河川事務所・川内出張所で働く人たちだ。
橋口季里さんー若手女性技術者として、現場に立つー

「正直、入る前はちょっと不安もありました」。そう話すのは、3年目の技術者・橋口季里さん。河川行政には男性が多いというイメージがあるが、実際に飛び込んでみると不安はやる気へと変わっていった。「思っていたより女性も多かったです。橋口さんがそう感じたのも頷ける。川内川河川事務所が中心となり『川内川流域官民の女性技術者の会』が発足。令和4年度より川内川流域で働く様々な業種の女性技術者が集まり、意見交換や現場見学、情報発信を行っている。「先輩方の姿を見て、長く働き続けるイメージが持てました」と、ほほ笑む。
現在は、河川工事の監督員として堤防整備や補修工事などの現場に携わる。工事の進捗管理や安全確認など、その責任は大きい。もともと「ものづくり」に興味があったという橋口さんは、自身の仕事をこう捉えている。「川の安全を形にしていく。その作業がスムーズに進むよう管理するのが私の仕事です。何もなかったところに構造物ができていく過程や、河川敷が多目的グラウンドとしても使えるように、きれいに整備されていくのを見ると、やりがいを感じます」。
伊集院出身の橋口さんにとって、川内川は「すごく大きな川」だと感じた。川幅が広く、市街地のすぐそばに、これほど広い河川敷があることに驚いた。「住民の方も雨が降ると水位を気にかけていたり、堤防に崩れや異変があれば連絡をくださったり。川を一緒に見守っていると感じます」。
地域の子どもたちとの川遊びイベントにも参加した。「川の生き物調査やボート体験を通して、私自身も川で遊ぶ楽しさを初めて体感しました。安全に配慮した上で、これからも川に親しむ機会を増やしていけたらいいですね。そういう経験が川への愛着につながるはずですから」。



橋口さんにとって「持続可能なまち」とは何か。「やはり、真っ先に思い浮かぶのは“安全”です。防災がしっかりしていて、その上で人が集って、親しめる場所があること。整備された場所に安心が生まれ、そこに人がいる景色が、未来につながっていくのだと思います」。
今後は現場での経験を積み、設計段階から携われるようになりたいと語る。「川の計画から整備、管理までを一貫して理解し、河川づくりに関わっていくことが目標です。土木や河川の仕事は、防災だけでなく、人の暮らしや未来を支える仕事。ものづくりに興味がある方、特に女性にも、ぜひ一歩踏み出してほしい。仲間が増えるほど、さらに働きやすい環境になっていくはずです」と、エールを送った。
福原崚介さんー暮らしのすぐそばで、川を見守るー

「薩摩川内は子育てしやすいまちだなと感じています」。そう話すのは、赴任を機に市内での暮らしを始めた福原崚介さん。「公園が多く、少し足を伸ばせば川や山、海もある。スマホやゲームが身近な時代だからこそ、自然と触れ合える環境があるのは子育てにおいて大きな魅力です」。
2歳半になる息子さんの存在にも、その思いを強くしている。「自分も子どもの頃に川やキャンプに連れて行ってもらった記憶があります。息子にも同じように自然の中で育ってほしい。魚がおいしい、渋滞が少ない。本当に暮らしやすいです場所です」と、頬を緩ませた。
業務では事務方として、河川利用の契約管理や届出の受付、巡視パトロールなど幅広い役割を担う。
「川は“使われてこそ”の存在。企業から市民の方まで、さまざまな相談に対応しながら、どのように活用されているかを見守っています」。
川内川で特に驚いたのが、河川敷でのバーベキュー利用の多さだ。「これまでの赴任地ではあまり見られなかったこと。家族の集まりや部活動の壮行会など、大人数で親しまれているのが嬉しいですね。太平橋の下や新幹線の高架下は、特に人気のスポット。利用しやすいトイレがあり、車も入れる。きちんと整備されていることが、使いやすさにつながっていると思います」。利用者のマナーの良さにも感心している。「みなさんがきれいに使ってくださる。その心遣いが、今の美しい景観を保っているのだと思います」。



巡視パトロールでは、パトロールカーで川沿いを走り、異変がないかを目視で確認する。「何も起きないのが一番ですが、万が一の際にすぐ気づけるように。住民の方々も異変があると、すぐに教えてくださいます」。シラスウナギの稚魚の漁など、届け出を管理しつつ、現場も見つめる。薩摩川内ならではの川景色のひとつである。
仕事を通して、川内川を知り、まちの姿を捉えてきた福原さん。「飲み水、農業、工業、発電。川内川の水は暮らしのあらゆるところにつながる生命線です。渇水時の調整も、私たちの重要な役割です。国土交通省という名前は少し遠く感じるかもしれませんが、実はみなさんのすぐそばで、川を見守っています。川内川があるからこそ続くこのまちの暮らしを、これからも支えていきます」。
松永裕樹さんー川とともに生きる、防災への想いー

「ひとことで言うと、私は“防災オタク”なんです」。そう自己紹介するのは、川内川河川事務所川内出張所の所長・松永裕樹さん。九州で2番目に長い一級河川・川内川。その中下流域約34キロメートルを、最前線で見守ってきた。
松永さんが防災の重みを痛感したのは、平成18年の大水害だった。「普段は穏やかな川が窓の外でみるみる水位を上げていく。避難勧告が出るなか、5日間、情報を出し続けました。正直、水の怖さを初めて体で感じました」。この経験が、その後の仕事の軸となった。

堤防整備などの「ハード対策」に加え、住民の行動を促す「ソフト対策」を重視する。「水害は忘れた頃にやってくる。だからこそ風化させない仕組みが必要です」。ハザードマップの作成支援、避難行動の整理、各地の浸水痕の表示。自治体と議論を重ね、地域一体となって防災の土壌を耕してきた。
その中で生まれたのが、水位や映像を誰でも確認できる仕組み『早よ見やん(早く見て)川内川』だ。「情報があっても、分かりにくければ意味がない。消防や自治体と試行錯誤し、川に特化して市民が直感的に判断できるツールを目指しました」。今では大雨のたびに、多くの人が利用するものとなった。

実は松永さん自身、浸水想定区域内に家を建てて暮らしている。「河川の管理者がそこに住むなんてありえない、と言われたこともあります。それでもこの地に愛着を感じ、生活者として防災に向き合いたかった」。地域のボランティア団体に入り、高齢者の避難支援を担い、防災士の資格も自費で取得した。
一方で松永さんは、川を守る対象だけに留めない。引堤によって生まれた河川敷を活用し、人が集う空間が広げてきた。「日常的に川に親しんでいるからこそ、異変にも気づける。防災と日常は地続きなのです」。

川内川の過去も現在へとつないだ。渡し船の時代、薩摩街道「渡唐口」に築かれた石垣が、姿を変えて堤防の一部として生まれ変わったのだ。黒々と重厚な石積みの階段は、かつての水運の賑わいを彷彿とさせる立派な佇まいを見せている。石垣を大切に保存してきた地域の人々、そしてその想いを受け継ぎ、ていねいに仕上げた職人たち。志を同じくする人々の手によって、この景色は作り上げられた。
「川内川は時に厳しく、時に大きな恵みを与えてくれる存在。だからこそ、正しく知り、関わることが大切です。川とともに生きる。その覚悟を、これからも地域と一緒に育んでいきたいですね」。

川を拓くことが、未来をつくる
3人の話を通して感じたのは、地域の防災力とは、誰かに任せるのではなく、「自分たちで培っていくもの」だということ。河川敷がひらかれ、人が集い、日常の風景になることで、川は少しずつ“自分ごと”になっていく。若手技術者として新しい視点を持ち込む橋口さん。事務方として基盤を支える福原さん。そして、河川の風景そのものを変えてきた松永さん。立場も世代も違う3人に共通していたのは、川を遠い存在にしない姿勢だ。守る、ひらく、未来につなぐ——。人が関わり、使い、愛することで、川は記憶に残る風景となる。ゆったりと流れ、まちの歴史を育んできた川内川。川とともにある暮らしが、これからも豊かで安全なものであるために。





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更新日:2026年03月13日