薩摩川内チャレンジストーリー(#49薩摩川内鰻)
本市では、令和3年6月8日に、市長が「薩摩川内市未来創生SDGs・カーボンニュートラル宣言」を実施し、2030年SDGsの達成と2050年カーボンニュートラルの達成に向けて取り組んでいます。
また、令和4年5月20日には、国(内閣府)のSDGs未来都市に選定され、今後さらにSDGs及びカーボンニュートラルの達成に向けて、「薩摩川内SDGsチャレンジ」を合言葉に市民総ぐるみで取り組むことを目指し、持続可能な社会の実現のために、一人ひとりができることからSDGsの達成に貢献し、市民のみなさんと一緒に本市の未来を創る各種取り組みを実施しています。
各種取り組みの1つとして、市内でSDGsに関連する取り組みを行っている市民の方をインタビューした「薩摩川内SDGsチャレンジストーリー」を動画及びWebコラムにて公表しています。
【関連ゴール】


養鰻のまちから、サーモンが泳ぎ出す
~薩摩川内鰻「薩州サーモン」の挑戦~
養殖に携わるみなさん
「好きな寿司ネタは?」。何気ないアンケートの回答も、時代を映す鏡となる。近年、若年層では好きな寿司ネタの上位となるなど、高い人気を集めているのがサーモンだ。食べやすく、良質なたんぱく質を含む食材として、私たちの食卓や飲食店のメニューにすっかり定着している。
人気のサーモンを薩摩川内市で育てようと取り組んでいるのが「薩摩川内鰻」だ。長年培ってきたうなぎ養殖の設備や技術を生かして、2024年から「薩州サーモン」の養殖事業に挑戦している。
うなぎの会社がなぜサーモンに挑むのか。食料の安定供給や地域産業の持続可能性というSDGsの視点から、その現場を訪ねた。
常に新しいチャレンジを
薩摩川内市を流れる一級河川・川内川。古くは、その流域で天然のうなぎが獲れていた。『川内市史』によると、川内川を多量にのぼるシラス鰻を利用し、企業体による養殖事業がスタートしたのが、1964(昭和39)年のこと。以降、うなぎの養殖が盛んに行われてきた歴史を持つ。
2010年、薩摩川内鰻は薩摩川内市東郷町に加工工場を開設し、うなぎを仕入れて、加工・販売するところから事業をスタート。2014年には養殖事業にも乗り出し、うなぎの養殖から加工まで、自社で手がける体制を築く。高い品質と鮮度を保ち、さばきから加工まで一気通貫で行い、全国へと出荷している。
薩摩川内市から全国へ

齋藤さん
この薩摩川内鰻に、縁あってUターン就職したのが、地元東郷町出身の齋藤隼次郎さんだ。薩摩川内鰻の工場が地元にできたことをきっかけに入社し、現在は管理本部管理課を中心に、会社のさまざまな業務を支えている。齋藤さんは、薩州サーモンへの取り組みについて、次のように語る。
「常に新しいチャレンジをしていこう、という社風なんです」。新たな魚種への挑戦は以前から検討していたという。その中で白羽の矢が立ったのがサーモンだった。背景にあるのは、寿司ネタをはじめとする安定した人気と需要の見込みである。
「まず、この場所で育つかどうか確かめよう」と、試験的に約1,000尾から養殖を始めた。結果は順調。大きな問題なく育つことが分かると、冷却設備などを整え、本格的な事業へと歩みを進めた。名前も薩摩の地で育ったサーモンという想いを込めて「薩州サーモン」と名付けた。現在は約2.5キログラムまで育てたサーモンを、年間約9,000尾出荷するまでになった。

養殖のノウハウを、そのままサーモンへ
話をうかがったところで、実際の養殖の現場へと向かった。水田が広がるのどかな一帯だが、市街地からも程近い。新幹線が走り、青い稲がすくすくと伸びる田園風景の中で、うなぎとサーモンが育てられている。
養殖場を訪れてまず驚いたのは、そのクリーンな環境だ。同じ建屋の中に、うなぎとサーモン、それぞれを育てる丸型のオープンタンクが整然と並んでいる。うなぎの区画は照明を抑えた暗い環境。一方、サーモンの区画は比較的明るく、緑色の光を当てて試験的な飼育を行っているタンクもあった。


使っているのは、敷地内の水源から確保した水。年間を通して水温が比較的安定しているため、うなぎには加温、サーモンには冷却するなど、それぞれの生育に適した水温に調整して使用している。水温や酸素濃度などの飼育環境は、ICTを活用して細かく管理している。
もちろん、現場では苦労もある。「うなぎより気を使いますよ」と、あるスタッフは笑顔で教えてくれた。それでも想定した以上にスムーズに進んでいるのは「うなぎ養殖で培った技術の多くを、サーモンにも応用できた」から。水を見る。魚の状態を見る。餌を管理する。魚種は違っても、養殖の基本には共通する部分も多い。「長年積み重ねてきた設備、人材、技術があったからこそ、薩州サーモンへの取り組みもスピーディーに進めることができたのかもしれません」と、齋藤さんは胸を張る。
「育てる漁業」の強みは、管理できること
国内で流通するサーモンの多くは輸入品である。それに対し、薩州サーモンの大きな強みの一つが鮮度だ。現在は県内を中心に販売しており、水揚げしたその日に締め、早ければその日のうちに届けることもできる。もう一つの強みは、陸上養殖ならではの品質管理である。海面養殖と比べ、赤潮など海の環境変化の影響を受けにくく、寄生虫などのリスクを抑えやすい。水温や酸素濃度、給餌量などを管理しながら、安定した環境で育てることができる。
さらに、餌や育て方を工夫することで、脂の乗り方や身質を調整できる余地もありそうだ。一例に、鹿児島らしさを打ち出す試みとして、知覧茶を配合した餌も使用している。事業はまだ3年目。これからデータと経験を蓄積しながら、料理人や消費者の嗜好に合うサーモンへと育てていく可能性もあるだろう。地元のスーパーや飲食店への出荷に加え、ホテルのシェフによるコラボメニューなど、地域内での活用も始まっている。
エサを食べるサーモン
うなぎのエサやり

地域の名を、そのままブランドに
「薩摩川内鰻」、そして「薩州サーモン」。同社は会社名にも商品名にも、地域を想起させる名前を掲げている。地域名を冠することは、単に産地を分かりやすくするだけではない。その土地の水や技術、人材を生かして商品を育て、商品が知られることで地域の名前も広がっていく。
齋藤さんは「薩摩川内市で、サーモンといえば薩州サーモンと言ってもらえるくらい、地元のブランドになれば」と期待をかける。会社が成長すれば雇用も増え、地域に還元できることも広がっていく。新しいことへの挑戦を、会社だけでなく働く人や地域の成長にもつなげていこうとしている。

育てた命を、食卓へ届ける
訪れた養殖場では、20代から40代のスタッフたちが、広い建屋を行き来しながら魚の状態を確認していた。インドネシアからの技能実習生も共に働き、和気あいあいと声を掛け合っていた。そんな彼らが「パンダうなぎ」と呼ぶうなぎがいる。養殖の過程で見つかった、体の一部が白くまだらになっている、1万尾に1尾いるかいないかというほど珍しいうなぎだ。大切に取り分けて水槽に入れ、みんなでかわいがっている姿も印象に残った。

養殖の段階では共通することも多いうなぎとサーモンだが、ひとつ大きな違いがある。うなぎは生きたまま出荷するが、サーモンはタンクから網ですくい上げ、その場で締めてから出荷している。サーモンの養殖事業を始めた当初、現場では「ここまで育てたのに…」と、かわいそうに思う気持ちをぬぐえなかったそうだ。
水温や酸素濃度を数値で管理し、安定した生産を目指す養殖。しかし、その根源にあるのは、生き物を育て、命をいただくという営みに他ならない。
獲るだけではなく、育てることで豊かな食を未来につなぐ。大切に育てられた一尾が食卓へ届くまでを知り、大切にいただく。「薩州サーモン」は、地域の豊かな水資源、企業がこの地で培ってきた技術、そして現場の人々が注いだ手間と愛情の賜物といえるだろう。


(取材:令和8年8月)
この記事に関するお問い合わせ先
未来政策部 企画政策課 企画総務・SDGsグループ
〒895-8650 神田町3-22
電話番号:0996-23-5111 ファックス番号:0996-20-5570
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更新日:2026年09月16日