薩摩川内SDGsチャレンジストーリー(#5 就労継続支援B型事業所「みんね」理事長 成松由香里さん)

更新日:2024年07月09日

薩摩川内市では、令和3年6月8日に、市長が「薩摩川内市未来創生SDGs・カーボンニュートラル宣言」を実施し、2030年SDGsの達成と2050年カーボンニュートラルの達成に向けて取り組んでいます。また、令和4年5月20日には、国(内閣府)のSDGs未来都市に選定され、今後さらにSDGs及びカーボンニュートラルの達成に向けて、「薩摩川内SDGsチャレンジ」を合言葉に市民総ぐるみで取り組むことを目指しており、持続可能な社会の実現のために、「薩摩川内SDGsチャレンジ」を合言葉として、一人ひとりができることからSDGsの達成に貢献し、市民のみなさんと一緒に薩摩川内市の未来をつくる各種取組を実施しています。

各種取組の1つとして、市内でSDGsに関連する取組を行っている市民の方をインタビューした「SDGsチャレンジストーリー」を動画及びWebコラムにて公表しています。第5弾となる今回は、特定非営利活動法人トポス 就労継続支援B型活動法人 みんねの成松 由香里さんをインタビューしました。

薩摩川内SDGsチャレンジストーリー #5

誰も取り残されず、 その人らしい人生を歩んでいくコミュニティを築く

特定非営利活動法人トポス 就労継続支援B型事業所「みんね」理事長 成松由香里さんと事業所のメンバーの方々

特定非営利活動法人トポス

就労継続支援B型事業所「みんね」理事長 成松由香里さんと事業所のメンバーの方々

 

 

SDGs とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、平成27年(2015年)9月の国連サミットで全会一致で採択され、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため令和12年(2030年)を年限とする、国際社会共通の目標です。なお、令和4(2022年)年5月20日、内閣府において「SDGs未来都市」選定証授与式が行われ、薩摩川内市を含む30の自治体が国(内閣府)から「SDGs未来都市」に選定されました。

この度、本市でSDGsの活動を日々行なっている市民の方々にインタビューを行い、それぞれの活動内容や、活動を通じて届けたいメッセージなどをご紹介します。

 

目次

誰もが気軽に訪問できるオープンな空間で ゆっくり急がず丁寧に、個性を尊重した支援

薩摩川内市西向田町のアーケード街に、 カラフルな幟と全面ガラス張りのポップな店舗を構える「ジェリーズポップコーン」。 特定非営利活動法人 トポス 就労継続支援B型事業所みんねが運営を行っている。

薩摩川内市西向田町のアーケード街に、

カラフルな幟と全面ガラス張りのポップな店舗を構える「ジェリーズポップコーン」。

特定非営利活動法人 トポス 就労継続支援B型事業所みんねが運営を行っている。

 

 

ガラス張りのポップなお店の扉を開けると、ポップコーンの甘い香りが漂ってくる「みんね」では、現在スタッフ3名、メンバー8名の総勢11名が働いている。こちらの店舗では、「ジェリーズポップコーン」の製造から販売までを一貫して行い、今後は餃子の製造販売にも力を入れる予定だ。スタッフ、メンバー全員のまとめ役として活動されている「みんね」理事長の成松由香里さんにお話を伺った。

 

ポップコーンが並ぶ店頭の様子

店頭ではでき立てのポップコーンが並ぶ

 

ポップコーンが並ぶ店頭の様子

常時25〜6種のフレーバーが揃う中で一番人気はキャラメル味

 

「当店舗では、毎日全員で作業分担をしながらポップコーンの製造販売を行っています。メンバーのみなさんは、毎日9時30分から15時30分まで勤務されており、休日は毎月8日程度です。私たちスタッフと一緒にポップコーンの袋詰めや、シール貼りなどそれぞれが得意な分野を担当しながら作業に取り組んでいます」と、成松さん。

 

作業の様子
作業の様子

 

「みんね」でポップコーン製造販売を行っている背景には3つの理由がある。製造工程が複数あるためメンバーが分担して作業を行えること。また、ポップコーンは賞味期限が長いので商品ロスが少なく、フレーバーの種類が多いので飽きがこない。そして最後に、五感をフルに使いながら作業できるので美味しい香りや、アツアツの商品に触れたり、感覚を研ぎ澄まして楽しめる仕事であること、と成松さんが話してくれた。

 

作業の様子

安全面を考慮して、ポップコーン機械操作はスタッフが行い、

シール貼りや選別作業、袋詰めなどの細かな作業をメンバーが担当している

 

「みんね」では時間をかけて丁寧に作業ができる環境を整えており、決して急かすことをせず、個々の障害の特性や、スキルを見極めた適切な支援を行っている。メンバーの中には自宅から1人でバスに乗り、片道40分ほどの通勤をする方もいれば、成松さんやスタッフがメンバーの自宅に送迎を行うなど、それぞれに必要な支援を行い、見守っている。

「店舗をつくる際、一番こだわったのは場所です。郊外ではなく敢えて街の中心地であるこのアーケード街を選びました。お店もスタッフもメンバーもみんなが、自然と街や地域住民の方に溶け込んで欲しいなと思ったからです。ちなみに、店舗名の『みんね』とは、鹿児島の声掛けの際に使う言葉です」と語る成松さん。ガラス張りの店舗は開放感があり、誰もが気軽に訪問できるオープンな空間として機能し、実際に街行く方や、障害者の方、そのご家族なども利用されているそうだ。

また、地元の学生ボランティアの受け入れや、地域のイベントに月一度参加するなど、メンバーにたくさんの人と触れ合える機会を積極的に設けている。

なお、地域のイベントに参加する際はスタッフ、メンバー全員で参加し、販売、接客から会計まで一貫して行っている。一般の人でも他人と商品の受け渡しから会計まで経験する人は多くない中、メンバーにとってはかなり難しい作業であり、最初は緊張しているが次第に慣れてくると、お客様との距離が縮まり、お客様に商品をお渡しする事ができるようになるそうだ。成松さん曰く、即実践的リハビリのような仕事は、事業所だけでは得られない貴重な経験として、メンバーの成長に繋がるのだ。

 

作業の様子
作業の様子

 

「私たちはいつでも誰でも大歓迎の気持ちがあるので、常にオープンスタイルです。なお、メンバーが不在の時は我々スタッフだけでポップコーンは作りません。なぜなら、スタッフが作ってしまうとメンバーの作業する喜びや達成感、事業所へ来る楽しみを奪ってしまうからです。経営的には、スタッフが作れば売り上げは伸びますが、利益追及だけを目的としておらず、メンバーが『自分たちが主体である事を感じてもらう』ために、敢えてスタッフだけで作業をしないように気をつけています」と、成松さん。

 

病院勤務時代の恩師の希望を叶えるため 同志と共に「地域での就労」を立ち上げる決意へ

みんなで作業をする様子

 

成松さんは「みんね」を立ち上げる以前は、作業療法士として精神科病院で22年勤務しており、勤務先の精神科病院は長期入院の慢性化した患者が多く、精神科リハビリのマンネリ化した環境に危惧していた。

そんな矢先、長く一緒に働いていた恩師である作業療法士の定年退職を迎える時期が近づいていた。恩師自身、重い病気を患い闘病しながらも誰よりも患者を想い、寄り添える素晴らしい生き方に成松さんは感銘を受けていたのだ。そんな恩師が定年後は、「これまでやってきた事を地域で展開したいが、自分にはもう体力が残っていない」と口にした事を成松さんは心から受け止めたのだ。

「これまで私を見守りながら作業療法士として育ててくれた恩師に恩返しがしたい」その一心で、成松さんは作業療法を存分に生かせると思った「地域での就労」を立ち上げる決意をした。「開所に向けて同志と準備を進める中、恩師の病状が悪化していましたが、『みんね』の開所は恩師にとって希望であり生きる目標だったので、絶対に諦めず必死で取り組んだ結果、平成28年(2016年)6月、無事に夢を叶える事ができました」と成松さん。

 

みんなで作業をする様子

 

なお、現在「みんね」で一緒に働いているスタッフは元正看護師であり、成松さんの想いに賛同して協力してくれた事業所立ち上げ当初からの大切な仲間である。信頼し合える仲間と一緒に、恩師の夢を引き継ぎ、次に繋げている成松さんたちの活動は明るい雰囲気に満ちた「みんね」が物語っている。

 

メンバーの次なる人生の ステップアップするきっかけとなる場所を目指して

みんねの前で撮った成松さんとスタッフの方々

「『みんね』は街の人と出会うきっかけの場所であり、メンバーの次なる人生のステップアップするきっかけとなる場所でありたい」と、想いを語ってくれた成松さん。

「みんね」ではメンバー自身が希望すれば、ステップアップするための支援を行うようにしている。その際も、決して急かす事なく、時間をかけてそれぞれの個性に合わせて適性を見極め、コミュニケーションを取りながらゆっくりと行う事を大切にしている。「みんね」に来る事により、次の人生のステップアップにつながるひとつのきっかけとなるよう、そしてメンバーが自立した生活ができるようになる事を目標としている。

「働く」「仕事をする」という事は、まず生活が安定していなければ成立しない。メンバーそれぞれ家庭の事情も状況も異なるので、「みんね」はみんなの居場所づくりとなる事も兼ねて、薩摩川内市の中心地に開所したのだ。

笑顔を見せながら作業をするスタッフの方

成松さんは「みんね」で働くメンバーの仕事振りをインスタグラムで情報発信している

 

 

「日々の活動の中で、常々SDGsの基本でもある『誰もが取り残されないように』を目標に掲げて取り組んでいます。事業所を立ち上げ、継続していくにはリスクも大きく大変な事も多々ありますが、若い人がもっとSDGsにチャレンジできるような社会になる事を願っています。先にも話しましたが、学生ボランティアや若い方が気軽にボランティアとして『みんね』のお手伝いをしてくれる事は大歓迎であり、実際に受け入れも行なっています。その背景には、メンバーが学生の方を始め地域の方々とたくさん触れ合う機会を作ってあげたいと考えています。孤立する事なく、社会と関わり、多くの人と触れ合って欲しい、そして誰も取り残されず、その人らしい人生を歩んでいって欲しい想いを持って活動をしています」と成松さん。

続けて、「今後については1人でも多くの方が思い描く道に進んで欲しいと願っています。そのためにもまずは、街の方々に『みんね』を周知してもらい、コロナがもう少し終息すれば以前のように、地域の方と関わる機会を増やしていきたいです」と成松さん。

 

ポップコーンの選別の様子

 

常日頃より「みんね」では、メンバーの方々に障害を持つ人たちが作った商品だからと同情でポップコーンを買ってもらうのではなく、お客様が「美味しい!」と感じて満足していただき、次も購入してもらえるために安心して食べられるクオリティの良いものを作ろうと伝えている。

「みんね」のポップコーンは美味しい、そしてその商品を作ったのは障害を持っている人たちである、ただそれだけのシンプルな事なのだ。

「薩摩川内市において一等地であるガラス張りの少し華やかなお店で、ポップコーンの甘い香りに包まれて働く事が、メンバーの方々にとって少しでも自信や誇りに繋がれば良いなと思います。現代社会において、増えゆく障害を抱える方を含め、地域の誰もが居心地良く集える場の提供ができる温もりのある事業の展開を行っていきたいと考えています」と、最後にやさしい笑顔で成松さんの想いを語ってくれた。

 

成松由香里さんの写真

成松 由香里さん

特定非営利活動法人トポス 就労継続支援B型活動法人 みんね

/理事長・管理者・サービス管理責任者・作業療法士

 

鹿児島県出身。平成6年(1994年)作業療法士免許取得し、精神科病院に22年ほど勤務した後に平成28年(2016年)6月にNPO法人設立。同11月に「みんね」開所。

この記事に関するお問い合わせ先

未来政策部 企画政策課 SDGs・開発グループ
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