薩摩川内チャレンジストーリー(#48未利用サメを「おいしい」に変える—甑島発・犬猫用ジャーキーの挑戦—)

更新日:2026年03月18日

本市では、令和3年6月8日に、市長が「薩摩川内市未来創生SDGs・カーボンニュートラル宣言」を実施し、2030年SDGsの達成と2050年カーボンニュートラルの達成に向けて取り組んでいます。

また、令和4年5月20日には、国(内閣府)のSDGs未来都市に選定され、今後さらにSDGs及びカーボンニュートラルの達成に向けて、「薩摩川内SDGsチャレンジ」を合言葉に市民総ぐるみで取り組むことを目指し、持続可能な社会の実現のために、一人ひとりができることからSDGsの達成に貢献し、市民のみなさんと一緒に本市の未来を創る各種取り組みを実施しています。

各種取り組みの1つとして、市内でSDGsに関連する取り組みを行っている市民の方をインタビューした「薩摩川内SDGsチャレンジストーリー」を動画及びWebコラムにて公表しています。

【関連ゴール】

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甑のおさかな本舗 代表 濵田 敏宏さん

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甑島のお土産売り場で、犬猫用と書かれたジャーキーが目に留まった。ラベルには犬と猫の写真。袋の裏を見ると、原材料はサメとある。少し意外で、思わず手に取った。家で愛犬に味見させると、ふだんのおやつと同じように匂いをかいでパクパク食べた。人間が口にしても、カワハギのおつまみのような素朴な風味がある。栄養成分やカロリーの表示もきちんとしていて、高たんぱく・低脂質。なるほど、ペットのおやつとして理にかなっている。なぜサメなのか。甑島で獲れるのか?その背景を知りたくなった。初めての船旅となる愛犬と一緒に甑島へ渡り、早春の陽光きらめく下甑島・手打の工房を訪ねた。

子どものおやつから始まった、島の手仕事

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食べやすい大きさにカットして冷凍保存

「甑のおさかな本舗」を運営するのは、濵田敏宏さん。大阪から甑島へ移り住んだIターンの漁師だ。「甑島は子育てするには最高の場所ですよ」。そう話す濵田さんは、夫婦と子ども二人で島に来て、その後家族が増え、四人の子を育てあげた。移住して20年以上、今も地元の漁船の乗組員として海へ出ている。漁師としての仕事の延長線上に、島の子どもたちに地元の魚を食べてもらうための取り組みもしている。大漁の時に獲れた魚を切り身に加工して冷凍し、給食センターへ寄贈する。「島の魚を子どもたちに食べてほしいんですよ」。島で受け取ってきたものがあるからこそ、その思いは自然と行動になっていった。

漁師生活のかたわら、魚を使ったジャーキー作りを始めたのは15年ほど前。「子どものおやつに、ちょうどええかなと思ってね」。時化で漁に出られない日などに、独学で加工法を調べては試行錯誤を重ねた。試作品の判定役は子どもたち。「子どもは正直だからね。おいしくないと食べない(笑)」。その反応に鍛えられるようにして、お魚ジャーキーは少しずつ形になっていった。味が評判を呼び、やがて土産品としての商品化を打診される。「甑島には土産物がまだ少なくてね。観光の人からも『何かあったらお願いします』って、声をかけられていたんです」。自宅の台所から始まったジャーキー作りだったが、豆腐店だった場所を借りて、専用の作業場を持つことになった。「ここの豆腐店の人たちにも、子育て中からいろいろ助けてもらいました。お豆腐をもらったりね」。こうして甑島の海の幸を、手仕事で凝縮した『甑のおさかな燻』が生まれた。

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観光案内所に並ぶ濵田さんのジャーキー

「サメ、ええやん」―クーピージャーキー誕生物語

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アオザメの切り身

ペット用のジャーキーを作ろうと思ったのは、島外から移住してきた飲食店の人たちとの交流がきっかけだった。犬や猫と暮らす人の身近な生活に触れるうち、「ワンちゃん猫ちゃん用も作ってみようか」と思い立ったという。そこで素材として浮上したのがサメだった。「世の中のイメージでは、サメってなんかくさいんじゃないかって。でもね、きちんと処理したら全然そんなことはない。新鮮なものは生きて上がってくるし、すぐに血抜きをしたら、くさみも出ない」。さらに栄養面でも、サメは高たんぱくで低脂質。「犬猫用おやつの原料としていけるんちゃうか」。ピンとくるものがあった。

魚のジャーキーの時と同じように、試作品を作っては、犬や猫に味見をしてもらった。サメの種類、スライスの厚み、血合いの残し具合、さらし方、乾燥の温度や時間など仕上がりや食いつき具合を手がかりに、工程の一つひとつを調整していった。

実際の作業を見せてもらうと、材料も工程もいたってシンプルだ。けれど、ここに至るまでに相当のプロセスを積み重ねてきたことが、手元から伝わってくる。原料として扱うのは、クロトガリザメ、アオザメ、シュモクザメが中心。新鮮なうちに下処理をして、ブロック状の切り身で冷凍しておく。作業をする日に冷蔵庫で解凍し、包丁で薄くスライスしていく。「サメは背骨も軟骨で、身を取る時にあまり無駄が出ないんですよ。骨の周りの血合いも、『最初はどうかな』と取り除いていたけど、適度に入っていたほうが、犬猫にはええみたい」。

魚を処理する様子
魚をさばく様子

ていねいな作業が光る

魚をきれいにする様子

手際よくカットした身を、流水にさらす。「これもな、臭みを抜く作業だけど、さらしすぎるとうまみも抜ける。ちょうどいい塩梅にせんと」。軽く水気を取って、乾燥機のトレーに並べていく。柔らかくつややかな身は、肉のようにも見える。乾燥機にセットして、温度と時間を設定する。「低温、中温、高温、時間もいろいろやってみた。高温だと脂が焼けてしまって、痛みが早くなるんでね。中温でじっくり水分を抜いていきます」。

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完成したジャーキーを手にニッコリ

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食いつき抜群。小型犬もガシガシ噛める

できあがったサメジャーキーは透明感があり、素材そのもののうまみに潮の風味がふっと残る。もちろん、人間が口にしてもまったく問題ない。作業場でおとなしくしていた愛犬にも、そろそろごほうびをあげようか。犬は濵田さんの手からちぎったジャーキーをもらうと、あっという間に完食し、会話をさえぎるようにピーピー鳴いておかわりをせがむ。「そんな言われたら、あげなあかんな」。濵田さんは目を細めながら、大きめのジャーキーを犬の口元へ。犬は奥歯でガシガシと噛み、食べ終わると満足そうに濵田さんの指をペロリと舐めた。材料の良さはもちろん、作業場の清潔さと手間を惜しまない仕事ぶりに、犬猫への思いやりがにじみ出ていた。「今はペットも家族やもんなあ。人間用もペット用も同じように作ってるよ。同じものを口にできるってええやん」。

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おいしいおやつに満足気なワンコ

濵田さんの研究と愛情の詰まった犬猫用ジャーキーは、試作に協力した犬と猫の名前にちなんで『クーピージャーキー』として商品化され、甑島のお土産として手に取る人が増えている。「反応があると嬉しいですよ。たくさんは作れないけれど、今までなら海に放るしかなかったサメをいくらか払って買い取れる。漁師さんにとっても、海にとっても、ワンちゃん猫ちゃんや飼い主さんにとっても喜んでもらえるならね」。漁師らしい日焼けした顔に、笑みが浮かんだ。

島の「あたりまえ」に、価値がある

そんな濵田さんが考えるSDGsとは。「持続可能な社会、なあ」。濵田さんは少し笑って、こう続けた。「もともと島にあった暮らし、普通の生活がそういう社会だったんちゃうかなあ」島にあるもので回して、余さず、捨てず、自然に戻していく。もちろん、いまは島の外へ出ることも増え、外から物も入ってくるようにもなった。便利になる一方で昔の形は薄れていくものの、根っこにある感覚は、今でも島のあちこちに息づいている。

その上で、濵田さんの作る犬猫用ジャーキーには、現代の視点が重なる。ペットが家族になり、口にするものの“出どころ”が気にされる時代。島の恵みと知恵を、今の暮らしに合う形に整える。ていねいに作られたジャーキーは、そうした島の空気ごと包んで、手に取る人に伝えていく。

網にかかったサメという"ちょっと困ること”を、家族のおやつという"うれしいこと”へ。「できる時に、できる分だけ」。そう言って濵田さんはジャーキーを納品しに、港へ向けて車を走らせた。小さな工房を起点に、島の循環は外へとつながっていく。

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松原より手打海岸を望む

取材:令和8年2月

甑のおさかな本舗

商品名『甑のおさかな燻』『秋太郎のもつ太郎』『クーピージャーキー』『コシキナッツ黒糖仕立て』など

『クーピージャーキー』は、上甑島観光案内所、下甑島観光案内所、駅市薩摩川内で取り扱い中

本記事は薩摩川内SDGsチャレンジインスタグラムにも掲載しています。ホームページには掲載していない写真や動画を見ることができますのでで、ぜひご確認ください。

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